昔、KOEI(現コーエーテクモ)の『大航海時代』というシリーズにハマっていました。
最初は船も小さく、資金もなく、
少し沖に出ただけで船は嵐で沈み、
運よく生き残っても、今度は海賊に追い回される。
「まだ何もしていないんだけど?」
そんな沈没を何度も経験しました。
ゲームのスタート地点はリスボン。
ストーリー上の関係だと思って気にも留めていませんでした。
でも今、地図を見返してみると、
この港が出発点だった理由に少し納得してしまいます。
今回は何度も沈没しては戻ったあの街を、
歴史の側から、改めて見てみようと思います。
地図が教えてくれる、リスボンという場所
地図を眺めていると、
リスボンがどんな場所にある街なのかが、なんとなく見えてきます。
ヨーロッパの西の端。
大きな川が流れ出る、その入り口に街がある。
内陸に閉じているわけでもなく、
いきなり外洋に放り出されるわけでもありません。
川と海の間に立つこの場所は、
「ちょっと外に出でみる」のに向いています。
様子を見ながら進めるし、
無理だと思えば戻ることもできる。
後から考えると、
多くの船がここから出て行ったのは、
自然とここが選ばれた場所だったから、なのかもしれません。
港町としての役割
港は、船が出入りするだけの場所ではありません。
人が集まり、物が集まり、話が集まる場所でもありました。
出港前には、船の手入れや荷の準備が進み、
どの海が荒れているのか、どこに風が吹いているのか、
そんな噂話が自然と集まってくる。
一方で帰りを待つ人がいて、
戻らなかった船の話も自然と集まってくる。
一方で、
帰るはずだったのに戻らなかった船の話も、
ここに残されていきます。

そうした情報が積み重なる方法で、
航海は「一隻きりの無謀な挑戦」ではなく、
前の経験を引き継ぎながら進む行動になっていきました。
港町の役目は、
冒険そのものを生み出すことではなく、
出発する準備と判断を支えること。
その役割があったからこそ、
外の世界へ向かう動きが続いて行ったのだと思います。
旅に出なかった人たち
航海の裏側には、
船に乗らず、港に残る人たちがいました。
彼らの役目は、
新しい航路を切り開くことではありません。
戻ってきた話を聞き、
何が危険で、何が通れたのかを整理し、
次に出る人達が判断しやすい形にすることでした。

何か指示するわけでも、
正解を保証するわけでもない。
ただ、選ぶための材料を残す。
港が「出発できる場所」であり続けたのは、
こうした人たちが残り続けたからでした。
エンリケ航海王子という存在
航海の時代を語るとき、
船に乗った人ばかりが目立ちがちですが、
港に残り、海の先を見つめていた人物もいました。
それがエンリケ航海王子です。
エンリケ航海王子は、
船に乗って海を渡った冒険家ではありません。
けれど、航海の時代を前に進めた人物でした。

彼がやったのは、
自分が航路を切り開くことではなく、
航海が続いていく仕組みを整えることです。
各地から集まる情報をまとめ、
航海術や地図の知識を蓄え、
「どこまでなら行けるのか」を一歩づつ確かめていく。
無謀な挑戦ではなく、
失敗しても次につながる航海を重ねていくやり方でした。
船が出て行ったあとの街
この街で起きていた変化は、
船が出ていく瞬間よりも、
出港したあとかもしれません。
戻ってきた船は、
積荷だけでなく、
海の向こうの話や、失敗の理由を持ち帰る。
戻らなかった船もまた、
次の判断を慎重にする材料になります。

そして、エンリケ航海王子はそうした経験を
ただの出来事で終わらせませんでした。
彼は船に乗らず、
航海の情報を集め、整理し、
情報を少しづつ更新していきました。
旅に出た人だけでなく、
残された経験と判断によって前に進むーー。
その形を整えて行ったのです。
まとめ:広がっていった世界
この街から始まった航海は、
最初から遠くを目指していたわけではありませんでした。
行けるところまで行き、戻り、
「今回はここまでで良さそうだ」と判断し、
そこで得た経験を次に繋げていく。
その繰り返しの中で、
港の向こうは、少しずつ
「名前を聞くだけで不安になる場所」ではなくなっていきます。

大きな発見や劇的な変化は、
勢いで突っ込んだ結果ではありません。
港に残された判断と、
積み重ねられた経験が、
世界の輪郭を、ゆっくりと、しかし確実に広げていった。
旅は、一度きりの霧の中の冒険ではなく、
「次も、たぶん大丈夫そうだ」と思える行為になりました。
その起点として、このリスボンの街は、
とても地味に、しかし確実に機能していたのだと思います。


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