今日の旅の行き先は、地中海に浮かぶ小さな島──マルタです。
東京23区の半分ほどの面積に、世界遺産と青い海、歴史のロマンがギュッと詰まったこの国。
行ってみたい。でも、簡単には行けない。だからこそ、行ったつもりで旅してみましょう。
パソコンやスマホの前で、深呼吸して目を閉じてください。
潮の香り、石畳の足音、赤いポスト、そして青い空──想像の翼が広がる準備はできましたか?
青の世界──“マルタブルー”に染まる旅
マルタを語るとき、まず触れずにはいられないのが「青」です。
港に停泊する小さな漁船「ルッツゥ」の船体には、鮮やかな青が塗られ、海に浮かぶその姿はまるで絵画の
よう。

そして、マルタ島南部の「ブルーグロット(青の洞門)」。
午前中の陽ざしが差し込むと、海の底から青い光が湧き上がってくるように見えます。言葉で言い表すのが
もどかしいほどの美しさです。


泳いだつもりのマルタ──青にとける一日
透明な海に身をあずけ、青空を仰ぎながら、ただ波に揺られる。
そんな贅沢を想像するだけで、すこし心が軽くなる気がします。
このブログでは「行ったつもりの旅」をテーマにしていますが、今回ばかりは少し夢を見させてください。
想像の中で泳ぐマルタの海は、あまりにも気持ちよさそうだったので──。
ブルーラグーン──光の中に浮かぶ時間
コミノ島にあるブルーラグーン。
旅のガイドブックを開けば、ほぼ必ず登場するマルタ屈指の絶景です。
エメラルドグリーンの水は底まで透き通り、ボートの影がくっきりと映るほど。
陽ざしが差し込むと、海そのものが発光しているように見えるのだとか。


街歩きと歴史が混ざる風景
首都ヴァレッタに足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは石造りの街並み。
蜂蜜色の建物がぎっしりと並び、どこを歩いても歴史の舞台裏を歩いているような気分になります。
それもそのはず、ヴァレッタはまるごと世界遺産。16世紀に聖ヨハネ騎士団が築いた要塞都市で、今でも当時の建物がそのまま残っています。
でもその重厚な景観の中に、イギリスの赤いポストがあったり、パステルカラーの木製バルコニーがあったり。
不思議なミックス感が“異国感”をさらに引き立てます。


中に入ると、ため息しか出ない──マルタの教会は石造りの宝箱
マルタの教会は、外から見るとどれも石造りで控えめ。
けれど中に入れば、まるで“隠された宝箱”のよう。
その中でも、ヴァレッタの聖ヨハネ大聖堂は別格です。


石の声を聴きに──マルタの“最古の神殿”を歩くつもりで
青の世界から、今度は“石の世界”へ足を踏み入れます。
マルタ諸島には、世界でも最古級とされる巨石神殿が残されています。
最も古いものは紀元前3600年頃──エジプトのピラミッドよりも1000年近く古いそうです。
巨大な石が何層にも積み上げられ、通路や祭壇のような空間が残る神殿跡。
誰が、なぜ、どうやって?──その問いに、確かな答えはありません。


騎士たちが守った島──聖ヨハネ騎士団とマルタの物語
マルタの街を歩いていると、そこかしこに「騎士たちの痕跡」が残っています。
石造りの建物、重厚な教会、要塞のような造りの街並み……まるで中世の騎士団が今もどこかにいるような感覚。
実際、この島はかつて、「聖ヨハネ騎士団」という騎士たちの本拠地でした。

彼らはもともと、エルサレムで病人の看護を行う「ホスピタル騎士団」として始まった宗教的な騎士集団。
十字軍の時代には戦う力も持つようになり、やがてロドス島に拠点を移し、さらにはマルタへ──と移り住んでいきました。
マルタが彼らの本拠地となったのは、16世紀のこと。
ローマ教皇から島を与えられた騎士たちは、この小さな島を鉄壁の要塞都市に変え、
ヨーロッパを脅かしていたオスマン帝国に立ち向かう“盾”となったのです。

この時代、マルタは単なる南の小島ではなく、「キリスト教世界の最前線」でした。
この島を守ることは、ヨーロッパ全体を守ること。
そのため騎士たちは、国籍も言葉も異なる“ヨーロッパ連合”のような形でマルタに集まり、
砦を築き、教会を建て、街を整備し、やがて壮大な防衛体制を整えていきます。
その中で生まれたのが、あの金色の教会「聖ヨハネ大聖堂」でした。
自らの守護聖人である“洗礼者ヨハネ”の名を冠し、信仰と誇りを建築の中に刻んだ彼らの魂が、いまも静かに輝いています
まだ見ぬマルタ──まとめ
マルタは一度では語りきれない島です。
宝石のように澄んだブルーラグーン。
黄金の聖堂と、何千年も前からそこに立ち続ける巨石神殿。
そして教会の鐘と、遠く重なる祈りの声。
歴史のページをめくるたびに、マルタはただの観光地ではなく、
さまざまな人の営みや信仰が交わり続けてきた「交差点の島」なのだと感じました。
こうして“行ったつもり”で旅しているだけなのに、
少しだけ遠い世界が、近くに感じられるのは不思議です。

いつか本当にこの石畳を歩く日が来たなら、
そのときはきっと今日よりもっと深く、マルタを好きになるでしょう。
それまでは、心の中の地中海を、何度でも旅していきたいと思います。
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