世界史や聖書の中で、
何度もその名が登場する都市があります。
バビロン。
空中庭園、バベルの塔、そしてバビロン捕囚。
かつてこの都市は、古代世界における“世界の中心”ともいえる存在でした。
巨大な城壁に囲まれた都市には、
神々に捧げられた神殿が建ち並び、
青く輝くイシュタル門が人々を迎えていたといわれます。
けれど現在、
そのバビロンは静かな遺跡となっています。
イラクの乾いた大地に残るのは、
崩れた壁と土の跡。
かつて世界最大級の都市だったとは、すぐには信じられない風景です。
それでも、この都市の名前は消えませんでした。
聖書の物語の中に、
神話の中に、
そして人類の歴史の中に、
バビロンは何度も現れ続けます。
なぜこの都市は、
滅びた後もこれほど強く人々の記憶に残ったのでしょうか。
今回は、古代都市
バビロン遺跡
に眠る、文明の記憶を辿っていきます。
世界の中心だった都市
バビロンは、
古代メソポタミアを代表する巨大都市でした。
現在のイラク中部、
ユーフラテス川沿いに築かれたこの都市は、
豊かな水と交易によって発展し、
やがて古代世界でも屈指の規模を持つ都市になります。

Photo: Osama Sarm / CC BY-SA 4.0
特に新バビロニア王国の時代には、
ネブカドネザル2世
によって大規模な整備が行われ、
青く輝く
イシュタル門
などが築かれました。
またバビロンは、
バビロン捕囚
の舞台として、聖書の中にも登場します。
さらに、
アレキサンダー大王
もこの都市を重視し、
最後はバビロンで生涯を終えました。
世界史や神話、宗教の中で、
何度もその名が語られる理由は、
この都市が当時の人々にとって“世界の中心”のような存在だったからなのかもしれません。
青く輝く門と神々の都
バビロンを象徴する建築のひとつが、
イシュタル門
です。
この門は、鮮やかな青いレンガで覆われていました。
表面には、
- ライオン
- 牛
- ムシュフシュと呼ばれる竜
などが並び、
神々の力を象徴していたといわれています。
また門の先には、
「行列道路」と呼ばれる大通りが続いていました。
バビロンは、
神々の力や王の権威を“見せる都市”でもあったのです。
ちなみに現在、
最も有名なイシュタル門はイラクではなく、
ドイツに
復元展示されています。

Photo: Radomir Vrbovsky / CC BY-SA 4.0
かつて世界の中心だった都市の象徴は、
今では遠くヨーロッパに残されています。
バベルの塔はどこから生まれたのか
バビロンを有名にしたものは、
巨大な城壁や神殿だけではありません。
この都市には、
「天まで届く塔を建てようとした人々」の物語も残されています。
旧約聖書に登場する、
バベルの塔です。

Public Domain
人々は天に届く塔を築こうとしましたが、
神はそれを止めるため、
人々の言葉をバラバラにした――。
それが、世界にさまざまな言語が生まれた理由として語られています。
そしてこの神話は、
完全な空想ではないとも考えられています。
当時のバビロンには、
「ジッグラト」と呼ばれる階段状の巨大神殿が存在していました。
中でも
「エテメンアンキ」という巨大建築は、
バベルの塔のモデルだった可能性があるといわれています。
古代の人々が見上げた巨大建築は、
やがて“天に届く塔”の神話として語り継がれていったのかもしれません。
空中庭園は本当に存在したのか
バビロンと聞いて、
空中庭園を思い浮かべる人も多いかもしれません。
バビロンの空中庭園
は、古代世界の七不思議のひとつとして知られています。
巨大な建物の上に木々や植物が並び、
まるで空中に庭園が浮かんでいるように見えた――
そんな姿が記録に残されています。

Public Domain
しかし不思議なことに、
現在でも「これが空中庭園だった」と断定できる遺跡は見つかっていません。
そもそも本当にバビロンに存在したのか、
それとも別の都市の建築と混同されたのか、
今も議論が続いています。
有力なのが、
アッシリアの都ニネヴェにあった庭園が、
後の時代に“バビロンの空中庭園”として語られるようになったという説です。
世界史でも特に有名な建築なのに、
実在したかどうかすらはっきりしない。
それもまた、
バビロンという都市が今なお人を惹きつける理由なのかもしれません。
今は静かな遺跡となった
かつて古代メソポタミアの象徴だったバビロンは、
現在では
遺跡になっています。
そこに残されているのは、
崩れた壁や土色の遺構、
そして一部復元された建築物です。

Photo: Osama Shukir Muhammed Amin / CC BY-SA 4.0
バビロンは、
戦争や支配者の交代を繰り返す中で、
少しずつ衰退していきました。
やがて交易の中心も移り、
かつて世界を動かした巨大都市は、
長い時間をかけて歴史の中へ埋もれていきます。
それでもこの場所には、
聖書や神話、世界史に何度も登場した都市の痕跡が残っています。
数千年前に世界の中心だった都市は、
今も静かに、人類の歴史を語り続けているのです。
なぜバビロンは記憶され続けるのか
バビロンは、
すでに滅びた都市です。
かつて世界の中心だった場所には、
今は静かな遺跡が残るだけです。
それなのに、
この都市の名前は何度も歴史の中に現れます。
バベルの塔。
空中庭園の伝説。
聖書に描かれたバビロン捕囚。
そして、
アレキサンダー大王最期の地。
実在した歴史と、
神話や想像が、
この都市では混ざり合っています。

Photo: Safa.daneshvar / CC BY-SA 4.0
もしかするとバビロンは、
単なる古代都市ではなく、
「人類が思い描いた巨大文明の象徴」
そのものになっていったのかもしれません。
永遠に続くように見えた都市も、
数千年後には静かな土の跡になる。
それでも人は、
また巨大な都市を築き、
世界の中心を目指そうとする。
現代でも、
「バビロン」という名前は、
本や映画、フィクションの中で繰り返し使われ続けています。
それはきっと、
この都市が単なる遺跡ではなく、
繁栄や富、
理想や傲慢、
そして文明そのものを象徴する存在になったからなのでしょう。
だからこそ、
バビロンの物語は消えないのかもしれません。
遠い昔の都市でありながら、
そこには今の私たち自身の姿も、
どこか重なって見える気がします。


コメント